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2010年12月19日 (日)

神秘の夜~2008.8.23の記事~

或る夏、モスクワに2週間滞在し、一日中音楽漬けの充実した日々を過ごしていました。その晩聴いたコンサートが素晴らしく、余韻で眠れなくなった私は、部屋の窓から空を眺めていました。夜はいつまでも更けることなく、ほの白い明るさを残したまま、重なる色を少しずつ替えては消えていきます。気がつくと私の中にチャイコフスキーの「5月の夜(白夜)」が流れていました。

今でも忘れられないあの夜…ほんの数小節弾いただけで、モスクワのあの夏が、空気や香りまでも伴って蘇ってきます。フィンランドともノルウェーとも違うあの白夜。曙と夕闇が混じり合ったようなあの神秘の一時を今もこうして味わうことが出来るなんて、音楽とは何と素晴らしいのでしょう。ノルウェーでの白夜は自然がただ美しく、緑は瞳に染み入るように蒼く、精霊の存在をも感じさせるものでしたが、モスクワのそれはもっと精神的な、心が震えるような神秘の世界でした。チャイコフスキーの音楽はまるであの白夜を切り取ったかのようで、弾く度にあの美しい夜を思い出します。いつかまた、モスクワで白夜を眺めることが出来るでしょうか。

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