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2010年12月19日 (日)

痛みの音(2)~2008.8.15の記事~

ヘンデルのメサイアでは、この減7度下がった音のところにWunden(傷)という言葉が、英語版では同じ音にstripe(ムチ打ち)という言葉が当てはめられています。どちらもイエスの受難、人間としての痛みを示す言葉であり、減7度という厳しい音程にふさわしい言葉ではないかと思います。

テーマの4音にはフォルテ、更に全てにアクセントがつけられていますが、この4音目のGisに傷またはムチ打ちという言葉を意識することにより、自ずと、前の3音よりも独特な、一番印象的な響きとなるのではないでしょうか。

D先生が創作された歌詞「呪われよ!ユダとその息子達、7代にわたってその罪を償え」は、怒りが強く感じられます。メサイアの歌詞を意識すると、そこには苦しみと悲しみが存在し、怒りだけではない、また違った表情になるように思います。D先生がお弾きになったフーガは、テーマの4音の、行間ならぬ、音と音との間の音間としか言いようのない部分も素晴らしかったのです。一音一音が際立ち、いくつもの楽器がユニゾンで演奏しているかのように響き、ピアノが減衰楽器だということを忘れさせられるようなスケールを感じました。Gis音は特に下腹部に響くような低音の性質と、引き裂かれるような鋭い痛みのような感覚とが、見事に融合していました。

このフーガは怒りに支配されているのです。トリルは嵐を、半音は痛みを表し、曲の最後まで怒りは弱まることを知りません。7代にもわたるユダへの呪いと罪のように…

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