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2013年3月

2013年3月 3日 (日)

感覚を奏する(5)~アルメニアの夜~

4小節目の8分音符はテヌートで、やはり弦のように、一音一音途切れることのないように歌います。そして5~8小節目の左手の進行は、夜の色が刻々と変化していく様子を表現しています。4回繰り返される右手のメロディーによって、夜は明けてゆくのか、更けてゆくのか・・・それは弾き手のイメージに委ねられています。

このように隅々まで意識して練習した上で、これらのことを全て手の内におさめ、余分なものを削ぎ落とした研ぎ澄まされた音楽として奏します。

長女がこの曲を練習していた時、第一音目から全く進まなくなってしまったことがありました。右手のFと左手のDの響きを聴いては「違う」「違う」と何度も弾き直し、どうしても出来ないと悩んでいました。譜読み前からたっぷりと膨らませていたイメージ通りの響きを出すことが、なかなか出来なかったのです。永遠に朝のこない、架空の国の夜の闇のような音・・・聴く人に、そして自分自身に、そう感じられる圧倒的な説得力のようなものが、確かにその響きにはありませんでした。僅か8小節の最小限の音数で作られた小曲が、とてつもない難曲となって長女の前に立ちはだかっていました。

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感覚を奏する(4)~アルメニアの夜~

1小節目で一番響かせる音は、一般的には最初のFですが、この場合、続く8分音符のDをFの中に隠し過ぎず、弦のような感覚で音量を保って弾くことによって、闇の深みを表現することが出来るのではないかと思います。3、4拍目のDも同様に・・・一音一音が、次の音に向かって膨らんでいくようなイメージでしょうか。音的にクレッシェンドするのではなく、内面のエネルギーが保たれ膨らみながら次の音へと誘うように。

2小節目は回転の中で、表の音と裏の音を感じながら奏します。1拍目のFは表の音、2拍目と4拍目のDは裏の音、3拍目のCisは表の音ですが、Fよりは控え目な響きとなります。1拍目のFの響きを軸として、同じ動きの中で2拍目のDを弾きます。3拍目のCisは音の方向性を変えた回転となり、4拍目のDはまたCisの動きの中で裏の音として奏します。

3小節目では、E~D~CisからBへ行く時、増音程を意識することにより、自然に変化を欲します。より深い闇のような、または闇の均衡が僅かに狂ったような、ハッとする響きがふさわしいのです。

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